2012年1月28日土曜日

13:10-13:35

戦時下の文化宣伝における「国家」の表象
山本佐恵(日本大学非常勤講師)
 
  本発表では、戦前の日本で国策に基づく対外文化宣伝を行っていた国際文化振興会と鉄道省国際観光局が、1930年代から40年代にかけて製作した文化映画と写真を取り上げ、日中戦争期から太平洋戦争期にかけて海外に発信された「日本」のイメージとその表現について考察する。
  国際文化振興会は、1934年に国際親善のための「日本文化紹介」を目的に設立され、一方鉄道省国際観光局は、1930年に外客誘致のための「観光宣伝」を目的に設置された。両機関は映画製作や写真製作、雑誌・書籍など印刷物の発行、海外博覧会への出品など幅広く文化事業を手掛け、それらの文化事業を通して国策に基づき創りだされた「日本」のイメージを繰り返し発信した。
  映画についてはスタッフ等未だ不明な部分が多いが、写真については土門拳や木村伊兵衛などの報道写真家たちが関与しており、ドイツの報道写真やアメリカのグラフ雑誌の写真表現を参考にしていた。
  当時の日本における文化映画や報道写真の状況、製作の背景などを参照しながら、両機関の製作した映画と写真について報告する。