2012年1月28日土曜日

13:40-14:05
 
「満洲」移民プロパガンダとジェンダー
――坂根田鶴子監督『開拓の花嫁』を中心として――
池川玲子(実践女子大学他非常勤講師)
 
『開拓の花嫁』(1943年、満洲映画協会)は、「満洲」移民の女性配偶者募集のためのプロパガンダ映画である。監督は坂根田鶴子、日本における最初の女性監督である。本発表では、この短編を中心に、帝国主義的侵略の中で映画が果たした役割をジェンダー視点から検討する。
検討にあたっては複数のアプローチを採用する。
1、人生
溝口健二の弟子時代から満映での活動、戦後の仕事に至る坂根の人生を、第一次史料を用いて再構成する。
2、作品分析
坂根が、満洲の開拓地を、平和かつ男女平等なユートピアとして描き出したことを、フィルムに即して具体的に確認する。
3、政策との関連
移民政策の検討を通じて、総動員体制と母性保護の矛盾解決のための対策が映画の製作背景にあったことを指摘する。
最終的に提示されるのは、
女性監督が「男女平等」表象を創造するためには、国策プロパガンダの枠組みが必要であった/『開拓の花嫁』には、同時代の主流であった軍国主義的かつ男性中心的映画に対するカウンターの要素が含まれている/『開拓の花嫁』は、そのフェミニスト的なビジョンゆえに、主流映画を補填する形で帝国の侵略の一翼を担った/という、フェミニズムと政治の重層的な構図である。